在庫管理のDX化によるオムニチャネルの実現(他社に学ぶ DXの歩き方コラム 製造業編第4回)
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目次
美容製品メーカーのH社における「在庫管理業務」のDX推進事例をご紹介します。
DX推進に取り組む背景と目的
創業当初から自社製品をインターネット上で販売してきたH社では、自社独自のECサイトだけでなく、大手のモール型ECサイトにも出店しており、複数のECサイトを運営していました。
売れ筋商品拡販のための販売チャネル拡大や、新しい製品ブランドの立ち上げのために、ECサイトが年々増加している状況で、業務面では以下のような問題が発生していました。
- ECサイト毎にシステムや運営に関わる部署が違っていたこともあり、在庫管理が一元化されていなかった。
- 実店舗を出店したが、在庫管理は独自で行っていたため、顧客がインターネット上で販売されている製品を購入するために来店しても在庫が無いことが頻発していた。
- ECサイトの立ち上げや、実店舗の出店等、販売チャネルの拡大を優先して取り組んできたため、在庫管理を含むバックエンドの仕組みが標準化されておらず、非効率な状態になっていた。
- 各サイトの在庫状況の把握、調整等、在庫管理業務にかかる業務負荷が増大していた。
上記問題を解決するため、在庫管理業務の標準化(DX推進)に取り組む事にしました。
DX推進の目標
在庫管理業務のDX推進にあたり、まずは、以下を目標として設定しました。
- 欠品による実店舗での販売機会ロスを半減させる。
- 在庫管理業務に関わる人員を30%削減する。
併せて、以下のような効果も狙いました。
- 適正在庫の把握により、欠品・余剰在庫を削減。
- 在庫管理業務の効率化により空いた時間・人員を営業企画や製品企画など、より生産性の高い業務に転換。
DX推進への取り組み
DX推進にあたり、まず、以下の内容を含む企画・計画を策定しました。
- 在庫管理に関わる業務全般のDX推進範囲と段階的な導入シナリオ
- 目的・目標達成に向けた改善策
- システムの導入を含めた改善スケジュール
上記のような企画・計画を策定した上で、在庫管理業務のDX推進に取り組みました。
取り組みのポイントは以下の通りです。
- 在庫情報の共有および、共有の自動化
改善前は在庫管理システムからCSV出力した在庫情報を、販売チャネル毎に割り当てたExcel表に入力し、それを各サイト、店舗の担当者が参照・更新し、1日に1回、実績を集約することで在庫を管理していました。
そのため、会社全体での在庫数をリアルタイムに把握することが難しい状況でした。
そこで、各サイト、店舗それぞれのシステムから出力された全社の販売実績情報(CSV)をAzure上のファイルサーバエリアに集約し、会社全体の出庫情報として統合しました。
その上で在庫管理システムに自動的にインポートすることで、在庫情報の一元管理を行いました。また参照用として「Microsoft Power Apps」で販売実績と在庫数の確認ができるアプリケーションを作成し「見える化」を行い、在庫の把握にかかっていた手間を削減しました。 - ECサイト上で店舗在庫を確認可能に
各サイトおよび、各店舗の在庫情報の共有を実現したことで、店舗および倉庫在庫確認ができるようになりました。
またWebサイト上で商品在庫数の確認ができるようになったことで、急ぎで商品が欲しい顧客を近い店舗に近い顧客を誘導することが可能になりました。
DX推進による効果
在庫管理のDX推進により、設定した目標を達成することができました。
- 販売機会ロスの半減
会社全体の販売実績と在庫の「見える化」が実現したことで、欠品による販売機会ロスを半減させることができました。 - 在庫管理業務に関わる人員の削減
改善前は、倉庫、ECサイト、店舗含め6名程度の人員が物流業務以外に関わっていましたが、DX推進により2~3名で対応できるようになりました。 - オムニチャネルの実現
会社全体での在庫情報を「見える化」できるようになったことで、ECサイトの顧客を店舗に誘導したり、店舗に来店した顧客をECサイトに誘導したりと、販売チャネルに関わらず機会を逃さない仕組みを実現することができました。
今回導入・活用したサービス
- ファイル保管:Microsoft Azure
- 見える化ツール:Microsoft Power Apps
「DX推進」に関しましては、ディーアイエスサービス&ソリューションまでお気軽にお問い合わせください。
本コラムは2022年2月現在の情報を基に作成しています。