DXコラム

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「顧客との関係性管理を通じて接点を創出し、売上向上、マーケティング戦略に繋げた成功事例」長嶋幹雄の営業DXコラム 第4回

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はじめに

経済産業省の「2022年版ものづくり白書(※1)」によると、2022年3月、従業員数が「不足」と感じている企業の割合が、「過剰」の割合を上回っており、全体的に人手不足の傾向となっているのが伺えます。
このような状況の中で採用を積極化することで問題を解決するというのは、日本の労働人口が右肩下がりであることからも非常に困難であると言えます。
頭数を増やして総当たり的な営業活動で業績を向上させるのでないとするならば、デジタルマーケティングなどを用いた現代社会に適した手法を採用することで、営業生産性を向上させるような変革が求められます。
今回は、顧客との関係性管理をテーマに、営業生産性を向上させた事例をご紹介します。

※1: 経済産業省「2022年版ものづくり白書」(第4章 人材確保・育成 第1節)
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2022/pdf/honbun_1_4_1.pdf


DX推進に取り組む背景と目的

T社は大型の機械工具メーカーであり、従業員数は450名、売上高が約120億円の企業です。
売上高はここ数年横ばい状態で、代表取締役の代替わりのタイミングで、より戦略的で、効率の良い営業活動を行いたいという新社長の想いから、社内の営業状況に関するヒアリングが行われました。
社内のヒアリング・調査の結果、下記のような問題が明らかになりました。

  • 営業管理に関するシステムは特別導入しておらず、顧客情報の管理や商談情報の管理、営業の活動管理(日報・週報・月報)などに関してもExcelをベースに管理をしている
  • 過去のクレーム情報は担当者の記憶レベルでしか管理できていない
  • 営業担当ごとに提供する情報の粒度にかなり差がある
  • 新規顧客への営業活動として実績が挙がっているのは展示会がメイン。営業担当ごとに行っている飛び込み訪問などはあまり効果が上がっていない
  • 営業担当の既存顧客への訪問履歴には偏りがあり、効率的な訪問ができているとは考えにくい
  • 取引が途絶え、休眠化している顧客が多い。また、取引が途絶えた理由が共有されていない
  • 現場で行われていた営業会議では売上額のことばかり言及されており、企業別の営業戦略などについては触れられていない
  • 顧客情報管理や営業戦略が属人化している

このように、会社としての営業戦略をベースにした営業活動が行われているとは言い難く、営業担当それぞれの属人化した顧客管理がベースとなって営業活動は行われていることが分かりました。
特に、休眠化した理由が不明、あるいは確認していない顧客が大半だったことや、過去のクレーム情報などの蓄積が無いことなど、十分な活動ができているとは言えない状況でした。
そこで、“顧客情報管理を通し、戦略的な営業活動の実現“をキーワードにDX化を目指すこととなりました。


DX推進の目標

DX推進にあたり、まずは以下を目標として設定しました。

  • 年間売上高10%向上(導入初年度に売上高約130億目標)
  • 休眠顧客の掘り起こし 年間25社

併せて以下のような効果も狙いました。

  • 展示会(自社開催)動員数の増加
  • 既存顧客との取引金額の増加
  • 顧客別の営業方針の明確化と共有

DX推進への取り組み

DX推進にあたり、まず以下の内容を含む企画・計画を策定しました。

  • DX推進範囲と段階的な導入シナリオ
  • 目的、目標達成に向けた改善策
  • システムツール導入含めた改善スケジュール

上記のような企画・計画を策定した上で、以下のようなステップで取組みを行いました。

①顧客情報の活用方法についての策定

まず、管理職による営業上の判断(訪問指示や、接点のない先方担当者への働きかけなど)をタイムリーに行う為に、どのような情報を蓄積する必要があるのかを策定しました。その上で、日常的にどのような活動を行っていくのかという業務シナリオを作成しました。


②CRM(顧客管理)ツール「Freshsales Suite」の採用と定着に向けたルール化

今回は各顧客の情報を共有し、適切なタイミングで行動する事でしっかりとファン化することを目的としたため、CRMツールの「Freshsales Suite」を採用することとしました。継続的に顧客の情報が更新し続けられないことには意味が無いため、スマートフォンやタブレットを用いて簡単に情報を入力できるようにし、また、入力項目は選択式にするなど、営業担当が入力に過剰に時間がかからないような運用手法を設定しました。また、ダッシュボード機能を利用してリアルタイムな情報共有を行うことで、自身の入力した情報が反映されていることを実感させるような取り組みも実施しました。


③データに基づいたマネジメントの実施

このような取り組みを通して、個別の社内打ち合わせでは顧客別のアプローチ戦略に言及しつつ、営業会議などではRFM分析(図A)などを用いた顧客のランク付けを行い、具体的な営業方針を示しました。また、蓄積した顧客ニーズを基に新しいイベント、新サービスなども積極的に開発・提供しました。RFM分析とは、「Recency:最新の購入日」、「Frequency:購入頻度」、「Monetary:金額ボリューム」の3つの指標を用いて、顧客のランク分けを実施する分析手法です。

図A:RFM分析例

ランクRecency
(最新の購入日)
Frequency
(購入頻度)
Monetary
(金額ボリューム)
51か月以内10回以上100万以上
43か月以内8回以上50万以上
36か月以内5回以上25万以上
21年以内3回以上15万以上
11年以上1回以下15万未満
                 

DX推進による効果

「Freshsales Suite」を用いた営業管理の実施により、下記のような効果が出ました。

  • 各種目標指標の達成
    顧客に対して偏りなく接点を設けたことで、製品以外の消耗品の販売や修理など従来獲得できていなかった売上につながる情報を広く獲得することができるようになりました。これにより既存顧客の利用頻度、利用量(客別平均売上)が向上しました。
    また、休眠顧客に関しても同様に継続的にアプローチを行い、積極的なイベント開催なども行ったことで取引再開に繋がりました。このような活動により、休眠顧客の掘り起こしは年間34社(目標対比136%)、年間売上高は約135億(目標対比103%)に至りました。
  • 展示会の動員数増加
    展示会を企画するにあたって、顧客訪問時に要望などのヒアリングを行いました。その情報を基に様々な新しい企画を展示会内で試験的に行うことにしました。また、従来はダイレクトメール、取引先への連絡などで展示会への集客を行っていましたが、これもFreshsalesSuiteを用いてWebサイトへの誘導なども実施しました。こういった取り組みによって、前年230名だった動員数は310名(前年比134%)に増加し、展示会内での売上も向上しました。
  • 積極的な営業体制の構築
    営業現場からの顧客情報を漏れなく共有することで、本部がそれを基に様々な分析を行ったうえで積極的な企画立案を行うという体制が構築できました。
    営業担当の属人的な営業から脱却し、実情に合った戦略的な営業を実施できるようになりました。

今回導入・活用したサービス

「DX推進」につきましては、ディーアイエスサービス&ソリューションまでお気軽にお問い合わせください。

本コラムは2022年10月現在の情報を基に作成しています。

mr nagashima

著者プロフィール

埼玉県出身。営業業務に関する効率化や生産性向上に向けた提案、販売のスペシャリスト。2000年入社、入社時から当時まだ珍しかったオフィスのフリーアドレス化やビデオ会議などコラボレーション環境構築などを数多く導入。また、セキュリティ対策として「Microsoft Enterprise Mobility + Security」、「Azure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop)」を活用した高セキュリティなリモートワーク環境の導入も得意とする。現在は、デジタルマーケティングにまで活動範囲を広げており、MAツールを中心に、過去販売実績、テレコール、オウンドメディアサイト、メールマーケティングを連携させた活動で実績を上げている。



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