DXコラム

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「見込み顧客育成の自動化による、営業スタッフに頼らない案件化率向上への取り組み」長嶋幹雄の営業DXコラム 第2回

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はじめに

昨今、潜在顧客や顕在顧客見込み顧客(マーケティング用語でこれらの見込み顧客を“リード”と言います)の商談見込み度を高める企業活動は大きく見直されつつあります。
インターネットやスマートフォンが普及をする前は情報の入手が難しかったため、製品情報の提供を見込み顧客に対して丁寧に行えば、商談見込み度は比較的容易に向上させることができました。
しかし、インターネットやスマートフォンの普及により、検索すれば欲しい情報をいつでも得ることができるようになったことで、一方的な情報提供の価値は薄くなりました。
顧客は現在の自分にとって有用な情報かどうかを取捨選択しています。そこでWebやメールといったリモートでの営業活動を行う上では、いかに顧客にとって有用な情報をピンポイントに提供し、営業成果に繋げていくかが焦点になっています。しかしながら、顧客の状況は様々であり、一人ひとりに対してピンポイントな情報提供を行うには多大な労力が必要となります。
今回は、DX推進の一環として、このような見込み顧客育成の自動化を実現したことで、営業効率の向上に成功した事例をご紹介します。


DX推進に取り組む背景と目的

O社では、企業研修、社員研修といった人材育成サービスを提供しています。
従来の新規顧客獲得手法は飛び込み営業が中心であり、その他にはセミナー開催や、展示会などのリアルイベントに参加する、あるいはダイレクトメールの送付などを行ってきました。
このような活動の中で見込み顧客のリストは所持していましたが、そこから実際に商談へ結び付くものは非常に少なく、リストに対して継続的な営業活動も行えていませんでした。
そういったことを鑑みてWebページにダウンロード用資料やコラムなどのコンテンツをアップすることや、メールマガジンの配信など新規案件獲得につなげる取り組みにもチャレンジをしましたが、以下のような問題が発生しました。

  • メール開封率が低く、クリック率、資料ダウンロードなどの顧客の反響に繋がっていない
  • アポイントに繋がらない
  • 顧客情報は蓄積していくが、そこから商談に結び付かない
  • 商談見込みが低い案件にも従業員が直接対応するため、効率が悪い

このように、所持している顧客情報から商談、成約に結び付けることができていないことから、顧客の購買傾向からニーズを読み取りピンポイントな情報を提供する「One to Oneマーケティング」の実現をテーマにDX化を目指すこととなりました。


DX推進の目標

DX推進にあたり、まずは以下を目標として設定しました。

  • 無料体験、相談会参加数の増加(20%向上)

O社では、無料の研修体験に参加していただき、その場で相談会として行いたい研修内容などのヒアリングをすることで提案に繋げるのが勝ちパターンでした。そこで、まずは無料体験の参加数増加を目標としました。

併せて、以下のような効果も狙いました。

  • メールマガジン開封率の増加
  • メールマガジン経由の資料請求、問い合わせ件数の増加
  • メール開封ユーザーのURLクリック率向上

DX推進への取り組み

DX推進にあたり、まず、以下の内容を含む企画・計画を策定しました。

  • 見込み顧客取り込みにおけるDX推進範囲と段階的な導入シナリオ
  • 目的、目標達成に向けた改善策
  • システムツール導入含めた改善スケジュール

上記のような企画・計画を策定した上で、以下のようなステップで取り組みを行いました。

①顧客育成のシナリオの策定とMA(マーケティングオートメーション)ツールの採用

まずはWebやメールマガジンを用いて、どのように顧客を無料体験・相談会に誘導していくかというシナリオの作成を行いました。顧客の行動に合わせて、どのようなタイミングでどのような行動、情報提供を行うべきかを議論しました。
その際ポイントとなったのは、顧客の行動をいかに察知するかということでした。
メールマガジンはメーリングリストを用いて一斉送信する形で配信していました。しかし、この手法では全体での開封率は確認できるものの、顧客単体が開封したかどうか、といった点まで判断が出来ませんでした。
そこで、顧客の行動履歴を自動で蓄積でき、それに対する対応も自動で行えるようなツールはないかと検討した結果、MAツールの導入を決めました。
定期的な情報提供を通して、顧客それぞれの反応(開封履歴、資料ダウンロード履歴など)や、どのようなテーマに反応したのか、どのようなWebページを閲覧しているのかといった行動履歴と、前述したシナリオをリンクさせ、顧客をゴールに誘導する仕組み化を決めました。

②MAツールの活用

次に、顧客の見込み度合を行動履歴に応じてランク分けすることを実施しました。
メールマガジンの開封を行った際や資料ダウンロードを行った際、特定のWebページを閲覧した際など、顧客の行動に点数をつけ、点数が高い顧客は見込み度合いが高い顧客として振り分けます(スコアリング)。
その後、ランクに応じてコラムや、イベント情報などのコンテンツを自動で送信するといった形で運用しました。
さらに、ある一定の点数に達した場合や、特別見込み度合が高いと判断できる行動を観測した場合には、即座に直接アプローチを行うようリマインドを営業担当に流すような設定を実施しました。

③データに基づいた顧客の課題・ニーズの把握

メールマガジンなどの配信内容に対する顧客の反応から、顧客の状況に応じた反響を得やすいテーマなどを分析しました。成約に至るまでの顧客の状況に合わせた課題・ニーズを先入観無く分析することで、開封率、クリック率、コンバージョン率といった各指標数値の改善を目指しました。


DX推進による効果

「One to One マーケティング」の実現をテーマにしたDX推進による取り組みで、当初の目的を達成するとともに以下のような効果も得られました。

  • 各種指標の向上
    MAツール運用から3か月で当初の目標である無料体験・相談会参加件数20%アップをクリアし、その後現在に至るまで月々の問い合わせ数は徐々に増加しています。更に、興味があるであろうと思われるターゲットに対し、欲しい情報を欲しいタイミングで提供することを意識した仕組み化を実施したため、メールマガジン開封率、メール内URLクリック率、コンバージョン率などの指標が大きく改善されました。更に、無料体験・相談会には見込み度合が高まっている顧客が多く参加していることから、相談会から商談に至る割合も大きく向上しました(約22%増)。
  • 営業効率の向上と、強固な営業基盤の実現
    全ての見込み顧客に対して抜け漏れなく、継続的に、自動で情報提供を行えるようになっただけではなく、顧客の見込み度の絞り込みや、次に打つべき一手の判断も自動化することができました。これにより、見込み度の低い顧客に割く時間は削減され、より売り上げに繋がりやすい案件に営業力を集中できるようになりました。また、顧客の状況に応じた様々なコンテンツが拡充されたことで、経験の浅い営業担当であっても一定のヒアリングを行うことで顧客の求める情報を容易に提供することができるようになりました。

今回導入・活用したサービス

「DX推進」につきましては、ディーアイエスサービス&ソリューションまでお気軽にお問い合わせください。

本コラムは2022年7月現在の情報を基に作成しています。


mr nagashima

著者プロフィール

長嶋 幹雄
埼玉県出身。営業業務に関する効率化や生産性向上に向けた提案、販売のスペシャリスト。2000年入社、入社時から当時まだ珍しかったオフィスのフリーアドレス化やビデオ会議などコラボレーション環境構築などを数多く導入。
また、セキュリティ対策として「Microsoft Enterprise Mobility + Security」、「Azure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop)」を活用した高セキュリティなリモートワーク環境の導入も得意とする。現在は、デジタルマーケティングにまで活動範囲を広げており、MAツールを中心に、過去販売実績、テレコール、オウンドメディアサイト、メールマーケティングを連携させた活動で実績を上げている。



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