DXコラム

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「営業成果向上と、営業スタッフの成長を実現したシンプルな管理手法事例」長嶋幹雄の営業DXコラム 第3回

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はじめに

コロナ禍により、顧客との直接的な接触機会は大きく減少しました。顧客先に直接足を運ぶ機会は減少し、新規顧客との接触機会であった展示会は中止となり、多くの企業は顧客との接点創出に頭を悩ませてきました。
2022年7月現在、徐々に対面での接触機会も増えつつある中で、ウクライナ情勢の悪化を発端とした原油高、原材料費の高騰などの影響もあり、マイナスの影響は避けられないとみる企業は多いのではないでしょうか。
そんな中で、企業としての収益を効率的に確保するための手法として改めて営業管理に注目が集まっています。今回は、DX推進の一環として、営業管理に着目し、営業効率の向上と営業スタッフの成長を実現した事例をご紹介します。


DX推進に取り組む背景と目的

A社は、オフィス用品の製造、販売を行っています。
コロナ禍で一時大きく売上が下がったことで、近年Webサイトを活用した見込み顧客の獲得に力を注いできました。徐々にWebサイトからの資料請求が増え、個別相談会の参加者も増えるなど、見込み顧客を呼び込むことに成功していましたが、なかなか成約に結び付かない状態が続いていました。
営業スタッフは17名で、それぞれ担当の顧客が割り振られています。

売り上げの9割近くは既存顧客からのリピート注文であり、新規顧客の対応は問い合わせのあったタイミングで手の空いている営業スタッフが個別で対応していました。新しい顧客層の開拓を目指していましたが、思うような成約に繋がらない状況でした。そこで原因究明のため調査を行い下記のような問題が分かりました。

  • 実績に直結しやすい既存顧客案件に注力しがちで、新規顧客案件への優先度が低くなりがちである
  • 商談の後追いが不十分で、また、商談状況の共有が為されていない
  • 商談状況の共有ルールは設けられている(Excelに都度記載)が、守られていない
  • 顧客情報は担当営業が属人的に管理しており、一部ブラックボックス化している
  • 管理職がプレイングマネージャーの為、部下の育成や案件フォローよりも自分の案件に時間を費やしている
  • 定量的な売上目標以外は管理されていない

このように、案件管理、行動管理、目標管理、スタッフ育成管理などの管理業務は部分的にのみ行われており、過去に採用した情報共有に関するルールも守られておらず、営業実績は個人の技量に強く依存する体制になっていることが分かりました。
そこで、“管理を通した効率的な営業成果向上“をキーワードにDX化を目指すこととなりました。


DX推進の目標

DX推進にあたり、まずは以下を目標として設定しました。

  • 新規獲得顧客件数(年間20件獲得)
  • 営業売上高向上(昨対比:103%)

併せて以下のような効果も狙いました。

  • 商談に関する各指標(成約率など)の向上
  • 管理職の管理業務へ費やす時間比率の増加
  • 若手社員の早期戦力化

DX推進への取り組み

DX推進にあたり、まず、以下の内容を含む企画・計画を策定しました。

  • DX推進範囲と段階的な導入シナリオ
  • 目的、目標達成に向けた改善策
  • システムツール導入含めた改善スケジュール

上記のような企画・計画を策定した上で、以下のようなステップで取り組みを行いました。

①管理する情報と指標の定義

まず、社内で行っている営業業務と具体的な活動、それに紐づく管理業務を可視化することにしました(図A)

図A:社内で行っている営業業務と具体的な活動、それに紐づく管理業務の可視化

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次に、従来の営業担当ごとに任せるやり方では商談のシナリオも確認するポイントもバラバラだったため、顧客の見込み度合を高めるために必要な行動(シナリオ)とその成否を判断する指標を設定しました(図B)

図B:顧客の見込み度合を高めるために必要な行動(シナリオ)とその成否を判断する指標

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例えば、顧客の見込み度合が比較検討段階にあるのであれば、次は提案/商談の段階に上げていく必要があります。そのためにはアポイント取得と、見積提示、プレゼン実施という活動を行う必要があり、管理をする上ではこの指標こそが業績に直結するポイントといえます。このようにして、顧客情報および商談情報としてどのような情報を蓄積する必要があるのかを定義していきました。


②SFAツール(Freshsales)の採用と定着に向けたルール化

次に、洗い出した情報をどう蓄積していくかを検討しました。
当初はExcelに営業担当情報と顧客情報、商談情報などを蓄積し、そのデータを元に様々な管理を行うことを想定していました。
しかし、そもそものデータ入力工数や分析するにあたっての作業などの業務負担はなるべく少なくし、営業活動に集中できるようにしたいという点と、案件管理、顧客管理、行動管理、目標管理をひとつのツールでまとめて行いたいということで、SFAツールの採用を決めました。顧客情報、商談情報の入力などは(図B)で定めた管理ポイントに絞って記載をするなど、現場の負担が最小限になりつつも、管理する上で必要な情報は蓄積できるような工夫を実施しました。


③データに基づいたマネジメントの実施

こうしてSFAの中には顧客情報に紐づいた案件情報、業績目標に紐づいた個人目標、各営業活動に紐づいた行動情報(日報ベース)がパイプライン(見込み顧客を獲得するまでの営業プロセス)として蓄積され、共有されていくことになりました。
 この情報はシンプルながら、業績に直結する重要な情報です。管理職はこのデータを元にマネジメントを(営業指針のフィードバック、目標数値に向けたアドバイス、実績に応じた評価の実施など)行うこととしました。


DX推進による効果

SFAを用いたシンプルな営業管理手法の採用によって、以下のような効果が得られ、目標を達成しました。

  • 各種指標の向上
    SFAを用いた管理をスタートさせる際に、どのようなアクションにも期日を設定し中途半端な状況にしないことを徹底しました。これによって新規顧客、既存顧客関わらず、パイプライン毎に抜け漏れなく必要十分な行動を実施することができました。また、業績に直結するポイントを中心にマネジメントを行い、顧客へのアプローチ手法に改善を重ねたことで、各種指標は大きく向上し、導入から1年で新規顧客獲得件数は20件、営業売上高も昨対比107%(達成率104%)と目標を達成しました。
  • 効率的な管理業務の実現
    SFA導入以前、データは分散して不十分な形で保存されていました。会議体で使う資料はそういった不十分な資料をまとめて作表され、更に管理を行う際のポイントも明確でなかったために改善ポイントについての議論は無駄の多いものでした。端的に必要な情報をSFAに入力し、会議などでは行動シナリオに基づくKPIを閲覧しながら業績に直結するポイントだけを議論することができるようになったため、余計な業務や無駄な打ち合わせ時間は大きく削減されました。
  • 勝ちパターンの確立と営業活動のパッケージ化
    営業活動を行う上で、業績に直結するポイントを押さえたシンプルな営業手法は非常に分かりやすいものでした。属人的な営業手法の場合、経験の浅い営業担当にはハードルが高い場合が多く、一定の結果を出すまでに長い時間を要していました。ベースとなる勝ちパターンである、行動シナリオの「CSF(Critical Success Factor):重要成功要因」をひとつの営業パッケージとして教育することで、経験が浅い社員の成約率が約20%向上しました。

今回導入・活用したサービス

「DX推進」につきましては、ディーアイエスサービス&ソリューションまでお気軽にお問い合わせください。

本コラムは2022年9月現在の情報を基に作成しています。


mr nagashima

著者プロフィール

長嶋 幹雄
埼玉県出身。営業業務に関する効率化や生産性向上に向けた提案、販売のスペシャリスト。2000年入社、入社時から当時まだ珍しかったオフィスのフリーアドレス化やビデオ会議などコラボレーション環境構築などを数多く導入。また、セキュリティ対策として「Microsoft Enterprise Mobility + Security」、「Azure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop)」を活用した高セキュリティなリモートワーク環境の導入も得意とする。現在は、デジタルマーケティングにまで活動範囲を広げており、MAツールを中心に、過去販売実績、テレコール、オウンドメディアサイト、メールマーケティングを連携させた活動で実績を上げている。



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