「ヘルプデスク自動化を成功させるカギは、顧客視点から情報管理基盤を整備していくこと!」前田剛志の問い合わせ業務の効率化に向けて Freshdesk解説コラム 第4回(全4回)
目次
はじめに
ヘルプデスクでは、システムの導入により業務効率化がもたらされます。特に、着目すべきは自動化という観点です。もちろん自動化により画期的なパフォーマンスの向上を期待できる場合もありますが、逆にユーザーや顧客を遠ざけてしまう場合もありますので、自動化を進める前には基本的なアプローチを十分検討しておくことが重要になります。
そこで本記事では、ヘルプデスク業務の自動化について、その概要やメリット、課題を中心に解説するとともに、話題のチャットボットを含め、Webフォーム、メール、SNS等、最近多くなってきている電話以外の多チャネルからの問い合わせを扱う場合を中心とした、理想的な自動化への取り組み方の方向性についても考えてみたいと思います。
ヘルプデスクとは
ヘルプデスク業務は、ユーザーや顧客からの問い合わせに対応し、技術的なサポートを提供する仕事です。製品やサービスの問題解決やアドバイスを通じて、スムーズな利用環境を提供します。
社内向けのヘルプデスクと社外向けのカスタマーサポート(コールセンターを含む)はどちらも、主に電話やメールなどで顧客やユーザー、社員の抱える問題解決をサポートしています。
ヘルプデスクの自動化の概要
まず、自動化のベースとなる情報基盤を構築するために、あらゆる問い合わせ案件を、ワークフロー化に適した「チケット」と呼ばれる情報システム上のデータベースに落とし込みます。チケットには、受付日時、問い合わせ内容、回答内容、ステータス(緊急度やアクションの状況)、受付チャネルや、担当者等の必要な入力項目が格納されます。
チケットに関しては、電話の場合はオペレーターが入力する場合もありますが、ライブ(有人)チャット、チャットボット、Webフォーム、電子メール、SNS等のチャネルでは、自動的に入力されることが多くなってきています。
問い合わせ対応の自動化
一問一答レベルの類似案件はチャットボットの自動回答によるセルフ解決で対応し、オペレーターを難易度の高い案件に集中させることにより、限られた人員での対応の最適化、効率化を図ることができます。
ポータル上の製品紹介、マニュアル、トラブルシューティング、関連FAQの近くに表示されているチャットボットから顧客やユーザーが問い合わせを行えるようにして、これに自動回答できる仕組みを用意することにより、簡易なトラブルに関しては、営業時間外でも即座に解決ができるようになります。
また、チャットボットは基本的には一問一答レベルの簡易案件への瞬時の対応に適していますが、チケットの形で蓄積された情報を参照することで、機械学習によって回答の精度を上げていくこともできます。
案件の自動的なルーティングによる最適な担当者のアサインやエスカレーション
チャットボットやFAQの参照でも顧客やユーザーがセルフ解決できない問い合わせについては、オペレーター等のカスタマーサポートに関わるスタッフが対応することになります。
チケットに関しては、電話の場合はオペレーターがアサインする場合もありますが、チケットの形で受け付けられた案件は、基本的にはチャネルを問わず、質問内容やステータスに応じて、在籍しているオペレーターの得意分野や作業負荷等に基づき、自動的に最適の担当者がアサインされます。
また、電話もしくは、それ以外のチャネルで受け付けられたチケットは、一次対応がなされたあとにさらに対応が必要な場合は、ほかの専門スタッフ、上長、関連部署等に自動的に割り当てられ、対応が引き継がれることになります。
これは「エスカレーション」と呼ばれるプロセスで、自動的に割り当てられる場合もありますが、ワークフロー的な承認を設定することも可能です。
チャットボット(簡易な応答)、FAQ等(閲覧のみによるセルフ解決)
↓
オペレーター(電話、ライブチャット、Webフォーム、メール、SNS等)
↓
上長、専門スタッフ(高度な対応)
↓
関連部署(返金、システムや商品の改善等担当業務以外の対応)
ヘルプデスク自動化のメリット
従来からあるFAQの参照に加えて、チャットボットによる自動回答で即応性を高めたセルフ解決の充実、オペレーターの対応時にはチケットベースの一元的な問い合わせ対応に関わる蓄積データの参照、タスクの割り当てや業務プロセスの自動化により、効率化と顧客満足度の双方を改善できますが、以下に企業や顧客、ユーザーが得られるメリットをご紹介します。
企業側のメリット
- 限られた人員で問い合わせの急増に対応しつつ、トータルでの回答品質や問題の解決率を向上させることが可能になります。電話等での専任スタッフによる対応では、簡易な問い合わせ(例:一問一答)を減らし、難易度の高い案件に集中することにより、業務全体での効率化、対応品質や顧客満足度向上を図ることができます。
- チケット化により、問い合わせの内容、ステータスや緊急度、担当者のスキル、得意分野、業務負荷を踏まえて、適任のオペレーターへのタスクの自動的な割り当て、優先順位付け、他部署等へのエスカレーションが可能となります。
- チケット化された問い合わせ対応記録を、マルチチャネルでの活用を前提として一元的に蓄積することができるため、チャットボットやオペレーターによる類似案件の参照や回答のテンプレート化が容易になり、手間をかけずに回答内容の平準化を達成することができます。
顧客、ユーザー側のメリット
- チャットボットによる回答の自動化は、蓄積されたチケット情報を活用したダイナミックなFAQの活用という側面もありますが、ポータル上のFAQから探すのが煩わしい場合や、わざわざ電話で確認するレベルでない軽微な問題に関して、夜間のような営業時間外でもユーザー自身で瞬時の解決を求めることができます。
- 結果として電話がつながりやすくなり、チャットボット→ライブ(有人)チャットへの流れも含めて、解決が難しい案件についても丁寧なサポートを享受できます。
- チケット化された対応履歴や、現在問い合わせ中の案件のステータス(対応状況)を参照することにより、問題解決の進捗状況を把握したり、気掛かりな点に関する追加の質問をしたりすることも可能です。
- 要望がFAQ等の標準的な回答内容にだけでなく、顧客の声として情報システムや製品等の改善にも反映される仕組みが企業側で整備されている場合には、長期的な顧客満足度の向上も期待できます。
ヘルプデスクの自動化に向けての課題
- まずは、Web上のチャットボットによる回答の自動化と、ポータル上のFAQとの連携によるセルフ解決の強化を図ることが必要となります。
- 問い合わせ案件(チケット)のステータス、性格に応じた共有、アサイン、エスカレーションや進捗管理のやりやすさを追求する必要があります。また、適用分野によっては情報システムの改善や、顧客の声を製品自体の改善に反映させるといった、長期的視野からの仕組みづくりも重要かもしれません。
- 過去の対応履歴が蓄積されたデータベースを日々の業務で参照し、類似もしくは同一の問い合わせに関する回答内容をテンプレートの活用等により平準化したり、過去に例のない問い合わせに関してはほかの専門スタッフの知恵を借りたりしながら、より効率的で高度な解決が可能な仕組みを整備することが必要になります。
ヘルプデスクの自動化の方策
- 自社の業務に最適なチャットボットの導入
シナリオベース型、自由会話型等、業務特性に応じた適切なチャットボットの選択が必要となります。一般的には、シナリオベースは問題ごとに対応策を区分したFAQに近く、ユーザーの使用率が低くても問題の解決率が比較的高いとも言われています。また、自由会話型は問題の解決率については問い合わせの難易度によってばらつきはあるのですが、ユーザーの使用率が高ければ、チケットの蓄積に伴う機械学習の積み重ねにより、精度の向上が期待できるかもしれません。それぞれの特徴を考慮したうえで配備していく必要がありますが、突然のトラブルで狼狽しているユーザーのいら立ちを抑えるには、自由会話型での簡易な対応が可能なチャットボットを、一次対応の位置づけで配備していくことが有効と考えられます。 - 自動化と人間対応のスムーズな連携と最適化
顧客が抱える緊急のトラブルに際して、チャットボットに代表されるような瞬時の問題解決が理想と言えることは確かですが、難易度が高ければそこで解決できない場合も多いでしょう。その場合は、ポータルやFAQの参照、ライブ(有人)チャットの活用、オペレーターへの電話での問い合わせ等に進む必要がありますが、そのためのスムーズな導線を用意する必要があります。
顧客の振る舞いを想定したうえでのWeb上の詳細情報、オペレーターによる電話での対応、ライブチャット等専門スタッフによるサポートを含めたより高度な解決手段をシームレスに配備していくことや、さらに案件の性格によって適時のエスカレーションも含めたシナリオを用意しながら対応していくことも検討してみてはいかがでしょうか?
例えば、チャットボットで対応が難しい案件は、FAQやポータル上の詳細情報への誘導はもちろんのこと、専門スタッフを介してのサポート、すなわち営業時間内は電話やライブチャットへ、深夜の場合はWebフォームや問い合わせメールへの、スムーズな移行を可能にする導線を用意するのが望ましいかもしれません。 - 従来型の電話での対応に愛着がある顧客やユーザーへの対応
チャットボットによる問い合わせが苦手で、電話のみで問い合わせを希望されるお客様も少なくありません。そのような場合は電話による対応を継続し、ときにはこちらから電話をかけて状況を確認するような、人間的な配慮が必要となる場合も想定しておきましょう。
ヘルプデスク自動化を成功させるにはツールの導入がおすすめ
ヘルプデスクの業務は多種多様で煩雑な業務になりがちです。そこで、ヘルプデスク業務を自動化することで業務負担を軽減することができ、従業員満足度やひいては顧客満足度にもつながるでしょう。しかし、ヘルプデスク自動化に当たっては、ツールの導入理解や設定など専門性が必要となります。
そこで、自動化を行う際には専門性の高い外部のパートナーに依頼することがおすすめです。
ディーアイエスサービス&ソリューションの提供する「Freshdesk」は、電話、Webフォーム、SNS、メール、さらにはライブチャット、チャットボットのログなど、さまざまなチャネルからの問い合わせや対応の履歴等を一元的に蓄積、管理することにより、ヘルプデスク業務の自動化をサポートしています。「Freshdesk」 は、情報管理基盤の整備に有効です。21日間の無料トライアルもありますので、ディーアイエスサービス&ソリューションまでお気軽にお問い合わせください。
本コラムは2023年9月現在の情報を基に作成しています。
ディーアイエスサービス&ソリューション株式会社
営業統括課 課長代理 Freshdesk 担当 前田 剛志
筆者プロフィール
大阪府出身。2000年入社。インサイドセールスとして営業業務に従事したのち、弊社が構築したシステム(サーバやネットワーク等)の保守・運用サービスの提案・導入を担当。インシデント管理の重要性を認識し、社内インシデント管理システム導入時には主導的役割を担った。現在は、各種マネージドサービスの提供により、情報システム管理者の負担軽減を実現するサービスの提案活動に従事している。保守・運用サポートのスペシャリストとして、過去の経験を活かした運用者目線でのヘルプデスクツールの提案・導入に定評がある。
前田剛志の問い合わせ業務の効率化に向けて Freshdesk解説コラム